シリーズの中で一番よくわからない話だけど、トロガイの過去がわかったり、バルサのタンダへの気持ちが細やかに描かれて好きなお話です。
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〜あらすじ〜
カンバルから新ヨゴに帰る途中のバルサは寝ている最中ある気配で起こされる。
そこで奴隷商人から逃げようとする男(ユグノ)を助ける。
ユグノはリー・トゥ・ルエン(木霊の想い人)と言う人の心を奪うような歌い手だった。20歳のように見えるが彼は52歳だった。
その頃タンダはカヤ(14歳の姪っ子)が何日も目覚めないので病ではないかと診ていた。そこでカヤの魂がいないことに気づくが心配する兄にはそのことを伝えないでいた。
カヤは隣町の18も年上の男に嫁入りすることが決まっていて塞ぎがちだったのと、その頃歌語りの旅芸人の歌に心を奪われていたそうだ。
タンダからカヤから花の匂いがしたと聞いたトロガイは思い当たることがあり、自分の昔の話をし始める。
トロガイが若い娘(トムカという名前だった)の頃3人の子供を産んでみんな病で亡くなったこと、その悲しみに暮れていた時に山の湖畔で眠ってしまい大きな宮の夢を見たこと、そこで花番と出会って恋をして息子を産んだこと。花番は花の成長を見守り、花が満開になったら受粉させてくれる(夢)を誘うこと、その夢から救い出してくれたのがトロガイの呪術の師匠ノルガイであること。
トロガイがタンダに夢の話をしていた頃、ユグノはバルサに先日新ヨゴの一ノ妃に歌を献上した話を聞いていた。
光扇京では一ノ妃が7日間も眠り続けていることが噂になっていた。チャグムはシュガがトロガイと月に一度会ってそれぞれの知識を交換していることを聞かされバルサ達と暮らした日に戻りたいと強く思い、そのまま眠れぬ夜を過ごしていたが、どこかから歌が聞こえてそのまま眠りに落ちていった。
トーヤとサヤが営むなんでも屋でトロガイと密会したシュガはチャグムが一ノ妃と同じように眠り続けていると相談する。
タンダは毎日カヤの元を訪れていたが日々身体が衰えていくのを見て一人で魂呼ばいを試みる。
夢の世界に行ったタンダは花番と出会い3日後の半月の夜に花が散ること。ユグノの行いのせいで花に異常が起きていることを知る。
様子のおかしい花番はタンダに花守りになることを提案し、カヤを救いたいタンダはそれを受け入れるが最後に自分の夢だけは自分のものとする呪文をかける。
ユグノを連れてタンダの元に帰ったバルサだが、獣のようになったタンダはユグノを襲う。そこで死闘を繰り広げるが、すんでのところでトロガイに助けられる。
カヤのために魂呼ばいを行ったことを知ったトロガイはバルサに事情を話す。
夢の中でカヤを探していたタンダはチャグムと出会う。
チャグムとの話からタンダは息子を亡くした一ノ妃の強い想いが花を支配していることに気づく。タンダはチャグムに花の散る時期と花が咲いているのは山の離宮であることをトロガイ達に伝えるよう託しチャグムの魂をはやぶさに変えて送り出す。
トロガイに会うためになんでも屋に訪れたシュガはバルサに出会う。
チャグムの話を聞いたバルサはシュガにジンを貸して欲しいと頼む。ジンはタンダに命を救われたことがあり、腕も立つから山の離宮に向かう間タンダを押さえ込んでもらえると思ったのだ。
どうしてもバルサに会いたいチャグムは父親や聖導師に3日後に山の離宮を空にして自分がそこにいなければ一ノ妃を救えない、そのために護衛のものを使いたいと申しでる。
山の離宮にバルサ達が向かう日、襲いかかるタンダをジンが相手する。
湖畔のほとりにたどり着いた一行が夜を迎えると湖に宮が現れる。
トロガイが魂と湖に飛ばし、ユグノに襲いかかるタンダをバルサが阻止し、夢の中ではタンダがカヤを見つけ解放しようとする様々なことが一気に起こる。
母の声で夢に誘われたユグノはトロガイに散った花の種を手渡され、これからも歌を歌い続けると約束する。
〜面白いポイント〜
・トロガイの過去が語られるところ
・バルサのタンダへの思いがはっきりと口にされるところ
・はぐれものとして生きていく心細さと喜び、村の集団の中で生きている安心と苦労が描かれるところ
・チャグムとの再会が嬉しい!!!
・親をも騙すチャグムのしたたかさ
〜好きなバルサのセリフ〜
「冗談じゃない。あいつを殺すくらいなら、あいつに、この首をくれてやるよ」
「あいつを止めるためなら全力をつくす。だけど、あいつを殺さねばならない、ぎりぎりの瞬間がきたら、わたしはあいつに殺されるほうを選ぶ。 あとの始末は勝手につけてくれ」